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ビーチのある風景(1)
ミノリ・K・エバンズ

ビーチに入る前にタイヤの空気を抜く

 さぁ今日はどこのビーチへ行こうか…最近の日曜日の朝のテーマ。ずっと天気予報をやっているテレビの15チャンネルによると、今日は西がいいらしい。いいらしいというのは波のこと。私たちが住んでいるワイルアから車でリフエの町を抜けて西へ向かう。途中、観光客で賑わうコロアとポイプへ向かう「ツリートンネル」を左手に見て、さらに西へ。一時間が経つ頃、西側で最大の町ワイメアを通り、隣町に入ると、そこが今日の目的地のビーチがあるケカハの町。この町の海沿いに何マイルにもわたって続いているのがケカハ・ビーチ(KEKAHA BEACH)。美しい白砂を持つカウアイで最大のビーチだ。

 ビーチへと続くダート道を走り、いよいよビーチにさしかかる直前で車を停めてタイヤの空気を抜く。砂浜で車がスタックするのを防ぐためだ。目の前で一台の赤いトラックがさっそくスタックして往生している。声をかけると、四駆が故障して二駆しか使えず砂浜に埋まってしまったらしい。頑丈そうな身体をしたトラックの持ち主とウォーレンが車を押し、私がハンドルを握ってアクセルをふかせて脱出を試みる。何とか砂地を抜けると「今日はもう諦めるよ」と、いい波が来ている海を横目に荷台のボードを降ろすことなく、彼は帰っていった。お気の毒。


海の向こうにニイハウ島が見渡せる

 ビーチに入って長い長い白砂のビーチをさらに西へ走っていくと、突然、迷彩服を着て銃を持った二人組に停められた。二人は米軍の隊員で、今日はすぐ先の丘で実射演習をしているのでここから先には入らないでくれと言われる。ちょうど停められた場所のすぐ先がもっともサーフィンに良さそうな波が立っているポイントだ。限界線ぎりぎりに車を停め、ウォーレンはパドリングで波に向かっていった。さっきの隊員の一人がホイッスルを鳴らして、「そっちに行くんじゃない」と警告を発した。その警告は彼の耳に届いていたに違いないけれど、聞こえない風を装ってあっと言う間に沖の方に行ってしまった。その隊員の怒鳴る声やホイッスルも、全身を厚ぼったく覆っている迷彩服も、カラっと晴れ上がった日曜日のケカハ・ビーチにとっても不似合いだった。


サーフボード片手に海へ入るロコ

 入り口でたくさんの車を見たのにビーチに入るとまだらにしか人はいない。広い広いこのビーチではちょっとやそっとの人じゃ混み合う事なんてあり得ない。私はボディボードを持ってちょっと海に入ってみたけれど、潮流はとても強くて速い。つつつぅっとあっと言う間に横に流されてしまう。自慢じゃないけれど、泳ぎにはまったく自信のない私。これは危険だとすぐに岸にあがることにして、エクササイズを兼ねて長いビーチをひたすら早く歩く。今日はパコ(犬です)はお留守番だ。島の西側は雨が少なくて、一年を通して安定した気候が望めるところだけれど、その分、日ざしはとっても強い。パコをこんなところに連れてきたらすぐにビスケットになっちゃうよって言うのがウォーレンの口ぐせだ。さらに真っ黒になるのを覚悟しつつビーチを歩いていると、多くのロコが休日を楽しんでいるのに出会う。サーフィンを楽しんでいるお父さんや彼氏を待っている間、家族はのんびりピクニックを楽しむのだ。


果てしなく伸びるケカハ・ビーチ

 立ち止まって西側を見ると、果てしないほど先までビーチは続いていて、とうぜんのことながら終わりは見えない。ここからさらにいくつかのビーチが連なって、西の果てポリハレ・ビーチへと途切れることなく続いているのだ。(途中には米軍の敷地内にあるメイヤー・ビーチもある)日本から来たトモダチがここに立って「どう楽しめばいいかわからないビーチ」と言ったことがあったけれど、海水浴で混み合う日本の海しか知らないとそんな感想を持つのも頷ける。ただただ白砂の海岸線が続いているほかは、ここには何もない。高さのある木もないから木陰もない。つかみようがないといえば、その通り。でもこのとことんまでの何にもなさが、私は気に入っている。南太平洋〜って感じがして、すごくいいのだ。


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