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■船旅ものがたり
このページではクルーズ乗船記や船にまつわる歴史、逸話など、船旅に関する読み物を掲載しています。
今回は、2006年7月1日に就航したばかりのMSCムジカの船内にご案内します。
MSCクルーズ MSCムジカ乗船記 〜船内編〜
クルーズライター:拓美 晟
 昨今、クルーズは年齢を問わずに人気が高まっており、世界各国で新造船が続々と登場してきている。寄港地やクラス、様々な要素でクルーズを選ぶ事が出来るが「処女航海」は堪らなく魅力的な要素のひとつである。「処女航海」・・・それは最初の航海の事。1隻に一度しかないそのチャンス、私、今回経験しちゃいました!


数々の名船が造られたフィンカンティエリ造船所

客船ターミナル前には停泊する船会社の看板が勢ぞろい

ターミナル周辺にはMSCムジカのポスターやフラッグがいっぱい

 今回乗船したクルーズは生粋のイタリア資本の船会社、MSCクルーズの大型新造船「MSCムジカ」。5〜6万トンクラスが主流だった同船会社が建造費600億円をかけ、もうひと回り大型の89,600トンを初めて手掛けた。船内は新たな試みも多数用意されているとの事で期待を胸にベニスに到着。・・・暑い!6月のベニスってこんなに暑かったっけ!?翌朝早々にメストレ地区のフィンカンティエリ造船所付近のホテルを出発し、ベニス島へ移動。バスで約10分程度と短い道のりではあるものの、サンタルチア駅を目指す列車と併走しながらベニス島まで繋がる橋上で改めて胸の高鳴りを覚えた。

 ベニス港はイタリアの海軍が保有している為、一般的な観光ガイドなどに地図が掲載されている事は極めて少ない。島内に入ってすぐに右に迂回すると閑散とした建物郡の中に太陽の見慣れたロゴが目に付く。その日はMSCムジカの処女航海前日、大量のMSCフラッグが至るところに設置してあった。客船ターミナルにてチェックインを済ませ、セレモニー会場「RIVA SETTE MARTIRI」まではシャトルボートにて約20分の移動。歴史ある建物と人、そして水が共存している美しい街並みに目を奪われていると、目の前に徐々に現れる白き輝きを放つ巨大な物体が・・・。新旧が美しく絡み合ったフレーム内の絵画、そんなMSCムジカとの初対面でした。


「RIVA SETTEMARTIRI」まで出発!

目前に迫るMSCムジカはド迫力!

命名式典のエンターテイメント

 この日はMSCムジカの命名式典。サンマルコ広場の近隣に停泊された船の正面には特設スタンド、ワイドスクリーン、プレス用のオフィス、テープカットの準備が着々と行われていた。MSCクルーズシップのネーミングは全て「音楽」に関連する名が付けられており、今回のムジカは「Music」の意。式典会場では開催が近づくにつれ、その名の通り芸術性の高い華麗な演出、驚異のエンターテイメントが数多く披露された。メインイベントとしてはイタリアが誇る大女優ソフィア・ローレンが登場し、命名と共にテープカット。吊り上げられたシャンパンが船体に弾けると盛り上がりは最高潮に達した。近所の窓からは住人の方々が温かく式典を見つめる。夕暮れ時のベニスは幻想的で、まるで映画の中に自分が入り込んだ様な錯覚に陥った。


命名式典のエンターテイメント

命名式典のエンターテイメント

ゴッド・マザーのソフィア・ローレンによる船上に吊られたシャンパン・テープカット

 夜のうちに本来の停泊地「STAZIONE MARITTIMA」まで戻り、いよいよ処女航海に向けて出発!MSCムジカの航路はベニスより出発し、バーリ(イタリア)、カタコロン(ギリシャ)、イズミール(トルコ)、イスタンブール(トルコ)、ドブロブニク(クロアチア)に寄港し、ベニスに戻る東地中海コース。今回はイスタンブールにて下船する4泊5日の行程。各地にて世界遺産や遺跡が盛り沢山な今回、欲張りな私は1日1コース、ショアエクスカーションを申し込んだ。個人で見て周る事ももちろん出来るが、船主催のコースに申し込んでいれば出航時刻に遅れる事もなく安心。英語ではあるがツアーガイドも引率してくれる。寄港地の話は又改めてするとして、無事申し込みを済ませたところでいよいよ船内見学へ。


MSC初の日本食レストラン「海渡」

「海渡」では日本語での会話も弾む

照り焼き

 MSCムジカはMSCクルーズ8隻目となり、1988年の設立以来海に伝わる伝統、文化を尊重すると同時にイタリアンホスピタリティを持ってお客様を迎えてきた。今回の新たな試みとしては初の日本食レストラン「海渡(カイト)」がオープン。近年クルーズ人口が徐々に増えてきている日本人マーケットに対する心意気だろうか、イタリアン中心のコース料理が続く中での醤油味は日本人にとって本当に嬉しい。全て有料となるが握り寿司はもちろん、天婦羅、照り焼き、蕎麦、そして日本酒(熱燗もOK)を飲む事が出来、食後の抹茶アイスは絶品。半被に鉢巻を見に付けたバリ出身の板前、ウェイターは日本語も堪能。一瞬「ここ・・・地中海だっけ!?」と錯覚してしまうほど和ませてくれる。後日航海中盤にアクセントとして故郷の味を想い出せる幸せを思う存分満喫させて頂いた。

 そしてもう一つ、印象に残ったのは医療施設の充実。常時看護婦3名、医師2名が乗船し、緊急手術はもちろんの事、予約をすれば何と人工透析も受けられる。出来る事なら元気に楽しく、24時間クルーズライフを満喫したいのが本音だが、万が一の時にこれだけの施設がある事はまさに心強い。


医務室前では看護婦が待機

見よ!全長293.8mの廊下

本場のピザは欠かせない

 又、オープンデッキ、レストランなどを歩いていると小さい子供が結構目に付く。MSCクルーズは大人2名と同部屋の子供は無料となる魅力的な料金設定は、一家の主の懐には大変有り難い。そして乗船した子供は大人の空間に無理して連れて来られた印象はまったくない。それは子供向けのイベントや施設、プールや食事も充実しているからだ。幼少時代から優雅な日差しの下にクルーズを楽しむライフスタイルからは異文化交流、立居振舞いが自然に身につく人生勉強の格好の場なのかも知れない。


全員参加が義務づけられている避難訓練。キャビンによって避難場所が決められている。

出航前のエントランスではクラシック演奏も聞ける

大白熱の大型スクリーン

 その他オープンデッキに設置された大型スクリーン、約6,000点の電化製品を販売しているデジタルショップ、ハンディキャップ用エレベーターなど、あったら便利と思う代物が至る所に目に付いた。

 充実していたのは設備だけではない。船内の公用語はイタリア語であるものの船内新聞やツアー案内などは英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、日本語と全7カ国語で用意されている。書面以外にも全員参加が義務付けられている避難訓練の際にも日本語でアナウンスされる。レストラン内でも横から聞こえるのはドイツ語、フランス語などなどグローバルな空間の中では日本語で話していてもまったく肩身の狭い思いはしなかった。故に余談ではあるが、時はサッカーW杯真っ只中。イタリア、ドイツ、フランスからのお客様が多い船内、夜半のスクリーン前でビール片手に盛り上がったのは言うまでもない・・・。


天気のいい日はビーチチェアが足りないくらい

ビュッフェ会場ではリアルスマイルのスイカがお出迎え!

船内のサロン。フォーマルナイト前のご予約はお早めに!

 灼熱の太陽の下、新造船MSCムジカにて航海した地中海は心地良く私を受け入れ、久しぶりに1日の短さを実感させてくれた。新しいだけに時にハプニングも起こる。ただ彼らの満面の笑みや拙い日本語での挨拶に“新造船の気持ちよさ”を感じた。

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