
| 名曲「雨だれ」が生まれたショパンの部屋(提供:海事プレス) |
|
マヨルカ島の首都、パルマ。一年の300日は晴天に恵まれるという太陽の島はこの日も見事に晴れきっていた。海岸沿いには町の名の由来でもあるヤシの木(パームツリー)が立ち並び、美しくなめらかなビーチラインはフランスのリビエラによく似ている。この島は知る人ぞ知る、音楽家ショパンが男装の女流作家、ジョルジュ・サンドと愛の逃避行を遂げた地。既婚者のサンドと禁断の恋に落ちたショパンは、夢の別天地を求めてマヨルカ島に辿り着き、バルデモーサの僧院でひっそりと、されど愛に満ち溢れた幸福な時間を過ごした。こんなロマンスを聞いていたからかバルデモーサの町はとても神秘的で、どこか幻想的な雰囲気を感じた。ショパンが暮らした部屋にはピアノやキャビネット、額の絵などが当時の面影のまま存在している。大雨の夜に愛するサンドの帰りを待ちわびながら作曲されたのが名曲「雨だれ」であるエピソードも有名だ。
もちろんマヨルカ島の見所は他にもあり、パルマには絶景の古城、ベルベデーレ城や今も使用されている闘牛場もある。黒真珠の名産地としても有名だ。また市内の大聖堂は欧州第3位の規模を誇り、スペイン国王が夏期に滞在する御用邸も隣接している。歴史あり文化あり、ただのリゾートと思っていたマヨルカは意外に奥が深くてあなどれない。

| ビュッフェで見かけたスイカの彫刻 ・・・ちょっとグロテスク、まるでサロメ |
|

|
この日の夜食はグランド・ビュッフェ。豪勢なテーブルには氷や果物のカービング(彫刻)が飾られ、空いた口がふさがらないくらいのごちそうがあふれんばかりにビュッフェを彩っている。クルーズの一大イベントだし写真をとるだけじゃもったいない・・と頑張ってちょっと食べた。真夜中にフルーツやケーキを食べて、なんだか贅沢な気分になった。
次の寄港地はバルセロナ。オリンピックも開かれた大都市だ。この町は想像通り、巨匠アントニオ・ガウディのカラフルな色どりに溢れている。参加したツアーはグエル公園、聖家族教会(サグラダ・ファミリア)、旧市街のゴシック地区やモンデュアルの丘などを巡る見所満載の観光満腹コース。100年以上前の構想とは信じがたい曲線美と色彩美、その才能にひたすら心打たれる。聖家族教会は長蛇の列で入場を諦めたが、完成までには再来するチャンスもあるだろうと気をながーく持つことにした。同行ガイドさんがこれまたガウディの信望者で、ツアー中有に100回は「アントーニ!ガウディ!」を絶叫していた(大袈裟でなくホントに「絶叫」)。芸術が爆発している町ではこれくらいで丁度いいのかも・・。午後は時間ができたので街を散策して、ハンドメイドやアンティークの味のあるジュエリーを気のむくままに買った。ストリートの露天商にまでアートが行き渡った、自然なのに「粋」な町だと思った。
名残惜しい最後の寄港地はマルセイユ。南仏プロバンスの気取らない港町だ。一日ゆっくり寄港するので、迷わず前回行きそびれたエクス・アン・プロバンスに足を延ばす事に決めた。エクスは近代絵画の父、セザンヌの故郷として知られる美しくこぢんまりとした町。郊外には彼が生前住んでいたアトリエが、今も当時のまま保存されている。土地にはセザンヌの父が営んでいた銀行や通っていた帽子屋、くつろいだカフェなど、ローカルなエピソードがひしめている。偉大な画家は今なおエクスに息づいていた。
マルセイユに戻った後は、さあお買い物。フランスの庶民派マーケット「モノプリ」にてチーズを約1キロ(!)と、ジャムやはちみつをごっそりまとめ買った。旧市街ではマルセイユ石鹸やラベンダーの精油など、プロバンスに漂うアロマの誘惑に完敗。ここでぐっと重い荷物が増えたが、下船地までは船が運んでくれる。全然へっちゃら。
翌日はとうとう下船。いつもながらあっという間に過ぎた一週間だった。名残惜しくてちょっと悲しいが、食欲、知的好奇心ともに満たしきって悔いはない。次回はエーゲ海とか、アドリア海もいいなあ。きりのない旅への探究心をお持ちのみなさん、船旅は最高ですよ。
|